スウェーデン、3月13日時点でのコロナウィルス感染者数は800人を超え、あっという間に感染が拡大しています。わずか数日前には200人程度だった感染者数が数日のうちに4倍。コロナウィルスに関する状況は、スウェーデンでも日々目まぐるしく変化していますが、本日2020年3月13日時点での情報をまとめました。
情報は、スウェーデンの公的機関や新聞、ニュースをまとめたものです。また現地在住の人間としての印象や私見も含まれていますのでご了承ください。
スウェーデンにお住まいの方、またご旅行などでスウェーデンにいらっしゃる方はご参考としていただければ幸いです。
スウェーデンの現状
感染者数
801名(2020年3月13日現在)。死者数は1名。
参考:世界マップ(日本経済新聞)

https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-world-map/
※ただし、マップ上の感染者数などは各国の発表と異なる場合もあるようなので、各国の最新情報は各国ごとにご確認ください。
あっという間に日本の感染者数を超えてしまったスウェーデンです。また、現在スウェーデンでは医療機関による感染確認の検査はあまり行われていないため、実際の感染者数はより多い可能性が高いようです。
イベント
スウェーデン政府は公衆衛生庁の勧告に従い、3月12日から500人以上が集まるイベントは禁止とすると発表しました。それに伴い、ストックホルム最大の展示会場Stockholmsmassan(東京ビッグサイトにあたるもの)は全ての展示会の中止を発表。また小規模の集会やイベント、フリーマーケットなども自粛されています。
…といっても、実は直前の3月7日(土)に、「メロディーフェスティバルMelodifestivalen」という国を挙げての音楽祭のファイナルが、65,000人も収容できるストックホルムのコンサート会場で行われたのですが…。。そこに触れる人があまりいないのが、ある意味潔いスウェーデンです(笑)。

写真:svtplay.seより
海外渡航
WHOが「コロナウィルスCovid-19はパンデミックといえる」と述べたことをうけ、3月13日スウェーデン外務省は、海外渡航については慎重を期すよう要請。特に、中国(主に武漢、香港、マカオは除く)、イラン一部、イタリア全土、韓国一部、オーストリア一部についてはできるだけ渡航を避けるよう指示しています。
ただ、現時点でスウェーデンへの入国停止や制限の対象国は特にありません。ただし、上記該当国から入国の場合は14日間の観察期間を設けその期間は自宅待機を推奨はしています。
一般企業などでは3月の初めごろから海外出張はすでに自粛傾向にあり、社員には海外出張をやめビデオ会議などを行うよう推進されていました。
学校、保育園
公衆衛生庁の指示では、義務教育中の学生は学校、保育園に行くことができるとしており、全国的な休校指示は出ていません。
ただし、「わずかでも風邪症状がある場合は直ちに自宅待機」としています。これは最近に海外渡航歴があるない関わらずすべての子供が同様の扱いで、小学校などでは30人クラスに5-10名程度の欠席児童が出ているようです。
自宅待機後の学校/保育園への再登校は、風邪症状が完全になくなってから丸2日は待機することとされています。
なお、3月13日には政府の指示で「各学校レベルで休校の必要があると判断した場合は義務教育でも休校してもよい」となりました。
こちらも公衆衛生庁の判断次第では、今後感染拡大により全国休校の可能性もありそうです。
政府の経済的対応
- スウェーデン国立銀行(Riksbanken)はコロナ原因で経営不振となっている会社に対し総額最大5000億スウェーデンクローナ=約5.5兆円(500Miljarder)の貸付金を準備したことを発表しました。
- 所得のある人が仕事を休む場合、最大14日間まで医師の診断書がなくても、社会保険事務所からの傷病手当(Sjukpenning)が支給されます(支給金額は通常所得の80%。普段は7日以上は医師の診断書が必要)。
- 子供の病気看病のため仕事を休む場合は、所得の80%が支給される傷病手当が普段からありますので、今回もそれが適用されます。
普段からそうですが、雇用形態に関わらず所得をベースとした傷病手当があるため、わかりやすいし休みやすいというのがスウェーデンに住んでいて感じることです。
感染について
感染防止対策で推進されていることは…
- 人混みを避け、人と近づかない。
- 不用意にかお(鼻、口、目)には触れない。
- 頻繁な手洗い。手を洗う際はお湯で石けんを使用しできれば30秒以上洗う事。また、エタノール系消毒液も推奨されています。
- 咳やくしゃみはひじの内側にする。
- 具合が悪いときは、外出せず家で休む。
スウェーデンの国営テレビが作ったビデオがなかなか面白いのでこちらにご紹介します(1分30秒)。スウェーデン語ですが、映像が皮肉好きなスウェーデンらしいので、よろしければご覧ください。

https://www.svt.se/nyheter/inrikes/sa-minskar-du-risken-att-smittas-av-coronaviruset
ちなみに、ビデオの最後には「マスクは効果があるの?」という質問があります。答えは、
健康な人が感染から逃れるための効果はない
と断言しています。
ただし、「自分が病気の場合、咳やくしゃみでまわりに病気をうつさない効果はある」と説明しています。
スウェーデンの生活
医療
日本に比べ、もともと病院、医者、クリニックなどの数が少ないスウェーデンでは、コロナウィルスの感染拡大により、病院キャパシティの限界がすぐに来てしまうことが懸念されています。
3月11日に放送されたスウェーデン国営テレビのコロナウィルス特番でも、その点が焦点として取り上げられていました。

現在でも、感染が疑われる場合には、まずはスウェーデン医療相談窓口1177に連絡をし、指示を仰ぐことが強く推奨されています。いきなり病院に行っても診てもらえません。
ちなみに、実際に感染の疑いで3月10日にこの相談窓口こちらに連絡をした知人の体験した1177の対応は以下です。
- そもそも電話がつながるまで30分以上待たされた。
- つながったら「感染症専門医から1週間以内に折り返し連絡をするので待機してほしい」といわれ電話は終了。
- その後その専門医とコロナ感染の検査をするか相談し、する場合は日程を予約する。
- 病院に来院して検査。
- 検査ができるまでは、当人は学校は休むこと(感染の疑いは11歳の子供)。家族は普段通りの生活をしてよい。
ただし、3月13日現在はより感染が広がっているため、リスクグループ(高齢者や疾患を持つ人)に該当しない場合は検査なしで14日間の自宅観察となるようです。
スーパーの様子
トイレットペーパーなどの品切れは特に見られません。また、日ごろから冷凍、冷蔵食品の使用が一般的というお国柄もあるのか、生鮮食品売り場にはそれほど影響が出ていないようです。
逆に品切れが目立つのは、乾燥パスタや缶詰製品など常温で長期保存が可能となる食品です。
また、薬局ではエタノール系消毒液の品切れが目立ちます。
マスクも品切れですが、これは元からほとんど販売されていないこと、また医療機関に優先的に回されているためと思われます。
ちなみに、スウェーデンで大人気の量り売り砂糖菓子の売り場は多くのスーパーでは一時的に閉鎖されるそうです。これは不特定多数の人がお菓子に直接触れる状態なので当然ですね。
地下鉄などの交通機関
数日前に、
不特定多数の人が乗り降し密室である地下鉄は、飛行機以上に感染リスクが高い
という報道がありました。
それ以来ストックホルムの地下鉄を利用する人は激減し、30分から1時間程度であれば徒歩や自転車で通勤や移動を行う人が増えています。
もともと健康志向で服装もカジュアル派が多いスウェーデンらしいです。
ストックホルム市内の様子
市内は現時点ではまだそれほど閑散とした様子はありません。逆に通勤時間帯は地下鉄を避ける人が増えたためか、歩いている人が多くなったように感じられます。
市内や電車内でマスクをしている人の姿はほとんど見かけません。
レストランやカフェ、大型スーパーなどの利用客はやや少ない印象です。
もともとリモートワークで自宅勤務が可能な働き方が多いスウェーデンでは、この時期には自宅勤務を行っている人が多いようです。
暮らしていての感想
スウェーデンの街の様子や報道の様子を見ていても、一般的に冷静さをたもっている人が多いという印象を受けます。
また、職場などのスウェーデン人たちと話してみても、コロナウィルスに感染したとしても、一般的にはそれほど病状は悪化しないと認識している人が多いようです。そのため、感染防止は主にリスクグループである高齢者や疾患を持つ人を守るために行うという意識が高いと感じられます。
また、3月11日には国営テレビでコロナウィルスに関する特番が組まれました。こちらでもとにかく一貫して数字とデータを分析し、専門家をスタジオに招き話を聞くという、スウェーデンらしいスタイル。あまり感情的にならない国民性がよく見てとれます。

コロナパニックと心理学の関係
さて、こちらの番組の最後に精神科医が出てきて、このコロナウィルスに関する人々の行動についての話していたのがスウェーデンらしく印象的でした。
新しいウィルスであるCovid-19コロナウィルスについては、現時点ではデータや研究が少なく誰も正確なことを断言できないのが現実。
そんな状況下で、コロナウィルス感染に対し、人がどのくらいの恐怖を感じるか、またパニック状態になるかどうかは、各個々人の「不安や恐怖の処理能力」の差が大きくでると語りました。
現時点でわかっている事実は、
- コロナウィルスは感染力が強い
- 感染しても重症になることは少ない
- 死に至るケースは1-2%程度
- リスクグループ(高齢者や疾患を持つ人)は注意が必要
です。
そのため、一般的に健康な人間は日常的な生活ができなくなるほど隔離した生活を行う必要はないと考えられます。
しかしそれでも社会生活を行うことができなくなるほど、強い恐怖やパニックを感じる場合、その問題は「コロナウィルス」にあるのではなく「個人が持つ恐怖や不安への対応能力」にあると考えられる。そういった場合は、心療内科やカウンセリングを受診することをお勧めします、というのがその精神科医の見解でした。
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以上、3月13日時点でのスウェーデンのコロナウィルス関連の様子をまとめてみました。
日本の様子と比較してみていかがでしょうか。このような非常事態には国民性や国の姿勢がよくうかがえる気がします。この機会にスウェーデンという国をもっと観察してみたいと思います。
これからも刻一刻と状況は変わると思いますが、必要以上にパニックに陥ったり精神的に追い込まれることなく、冷静に淡々と日々を送っていければいいなと思います。
皆さま、どうか感染に気をつけつつお過ごしください。
なお、万が一スウェーデン旅行中に何かお困りのこと、心配がある場合は、在スウェーデン日本領事館にご連絡することをお勧めします。
TEL:+46-(0)8-5793-5300 (閉館時は緊急電話対応業者につながります)
FAX:+46-(0)8-661-8820
スウェーデン在住:ダールマン容子
※記載には公的機関のホームページなどの情報をできるだけ正確に集めましたが、万が一誤った情報などにお気づきの方はどうぞご連絡ください。
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