世界を変えられると信じる、環境少女グレタ・トゥーンベリ

9月23日にニューヨークで開催された国連気候行動サミットでの演説以来、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリは「環境少女」として良くも悪くも日本でも大注目、一躍「時のヒト」となりました。

母国スウェーデンではグレタ・トゥーンベリの存在はだいぶ前から注目されていました。

それでも、この国連気候行動サミットでの演説はスウェーデン国内でも改めて注目を集めました。大人の新聞やメディアにはもちろんのこと、子供むけのメディアにまでもたくさん取り上げられていましたよ。

グレタ・トゥーンベリって?

日本ではこの国連サミットに関する報道で初めてこの少女のことを知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。グレタ・トゥーンベリについて少しまとめてみます。

写真提供:etc.se

グレタ・トゥーンベリまとめ
  • 2003年生まれ、2019年の今年は16歳の女の子。
  • 自閉症アスペルガー症候群や場面緘黙症の診断を受けていることを公言している。
  • 2018年8月から、毎週金曜日に学校を休み「気候のための学校ストライキ」という手書きの看板をもってスウェーデン議会の外に座り込みを続けた。
  • 座り込みの要求は、「大人はもっと責任をもって、より強い気候変動対策を打ち出し実行すること」。
  • この活動は「未来のための金曜日(Friday for Future)」と呼ばれるようになり、気候変動学校スト(School Climate Strike)という運動につながった。この活動はSNSやメディアを通して世界中に伝わった。
  • 2018年の国連気候変動会議で演説したのをきっかけに、このストライキ運動はさらに世界中に広がった。2019年には100万人以上の学生が参加する金曜日の学校ストが、世界中の複数都市で行われた。
  • 2018年12月、タイム誌の「世界で影響力のある未成年25人」の一人に選出された。
  • 2019年、国際女性デーを記念し「スウェーデンで最も重要な女性」に選ばれた。
  • 2019年9月、もう一つのノーベル平和賞といわれる「ライト・ライブリフッド賞(Right Livelihood price)、人権団体アムネスティ・インターナショナルの最も権威ある賞Ambassador of Conscience Awardを受賞。
  • また、2019年ノーベル平和賞にも推薦されている。

日本での反応は

2018年から、主にヨーロッパを中心に時の人として注目されていたグレタ・トゥーンベリですが、日本では2019年9月23日の国連気候行動サミットでの演説以来、突然注目を集めるようになりました。

そんな中、少しネットを検索するとグレタを批判、攻撃する記事やコメントの多さに驚きます。

「16歳の子供に地球温暖化の数字的根拠が理解できるわけがない。」

「(国連でのスピーチは)感情的で完全に場違いな演説だった。」

「大人に向かって口のきき方もわからないのか。」

「大人の操り人形でしかない。」

「お嬢ちゃまは、大人と子供の対立構造を作りたいようだ。」

他にも「気持ち悪い」「違和感が拭えない」「こんな表情は異常」「ナチスと繋がっている」など、ポイントが全くずれているコメントもたくさん見られました。

なにごとも、

何かを「する」ことより、何かをしている人を批判するほうがよっぽと簡単

なのだとつくづく感じます。

パフォーマンスの威力

日本でこんなにもグレタ・トゥーンベリに対して良くも悪くも注目が集まった理由は、今回の国連でのグレタの演説スタイルにあります。

16歳の少女が

国連サミットという大舞台で

攻撃的な口調で涙を目に浮かべ

世界の首脳らを前に

「How dare you!(よくもそんなことを!」という怒りの文句を4分間のスピーチで4回も口にし

環境対策に関する各国首脳たちの無能ぶりを攻め立てました。

その様子や物言いが多くの人にさまざまな感情を引き起こし、上に記載したような批判的コメントにもつながったのです。

でも実は、もともとのグレタ・トゥーンベリを知る人からみれば、この国連での演説はあくまでもパフォーマンスであったことがわかります。普段のグレタ・トゥーンベリはこちらのTEDのスピーチ(11分10秒)のように、静かで落ち着いた話し方です(第二外国語なのに英語の流暢さに舌を巻きます)。

国連で行われた「怒りのスピーチ」が誰のアイディアだったかはわかりません。でも、それを16歳のグレタがすばらしいできばえでやってのけたことで、結果的に環境後進国といわれる日本ですら、大きな反響を生むこととなったのです。

グレタは自分でも「アスペルガー障害があるから社会的コードがわからない。」としばしば口にしています。しかしこの「障害」こそが彼女の「個性」であり「才能」。それを「悪」として押し殺さなかったことが、このグレタ・トゥーンベリが特別になれた理由でもあるのです。

私のようなアスペルガーの人間にとっては、ほとんど全てのことが白黒どちらかなのです。私たちは嘘をつくのがあまり上手ではありません

(中略)

私にとってこれ(地球温暖化)は白か黒かの問題です。生き残りの問題となればグレーな部分はありません 

引用:Greta Thunberg TEDより

そもそもグレタ・トゥーンベリは具体的な環境問題対策を訴えているのではありません。そもそも16歳にそんなことを期待することはおかしいし、それは本人もよくわかっています。彼女の目的は、

彼女が持つ「環境の危機の認識」を世界と共有すること

世界のリーダーが科学者の声を聞くようにすること

この国連でのスピーチは、かのトランプにすらツイートさせるほどの効果を持ち、これらの目的に近づくのに十二分すぎる効果があったといえるでしょう。

未来を信じられる子供を育てる、大人の責任

私も今年の4月にこちらのソピバのブログでも少しグレタ・トゥーンベリのことを書きました。

ただこちらのブログの趣旨は、スウェーデンの教育と、その教育を受ける子供たちに感じる、未来への希望についてです。

自分の行動が世界を変えると信じる子供たち

グレタ・トゥーンベリの活躍を見るたびに、このブログで書いたことを改めて思います。

子供が「自分の行動が世界を変えると信じられる」こと。

大人として、子供がそう信じられる世界を作ること。

それが私たち大人の責任であり、大人ができる、最大限の未来への貢献なのです。