スウェーデンの新型コロナウィルス情報まとめ 3月27日

毎週金曜日にお届けしているスウェーデンの新型コロナウィルスCovid-19の状況まとめ、3月27日(金)最新版です。前回の3月20日から新たに変わった状況を中心にまとめました。なぜスウェーデンの対策が、他国と異なるのかという点についてもまとめました。

また、自宅勤務や外出自粛が続くスウェーデンでは、どのようなストレス解消方法が推奨されているかもまとめました。

スウェーデンにお住まいの方、またご旅行などでスウェーデンにいらっしゃる方、さらにスウェーデンという国にご興味がある方にご参考としていただければ幸いです。

3月13日時点での状況まとめは以下をご参照ください。

スウェーデンの新型コロナウィルス状況まとめ 3月13日

3月20日時点での状況まとめは以下です。

スウェーデンの新型コロナウィルスに関する状況まとめ 3月20日

スウェーデンの現状

感染者数 

 感染者数3,046名。死者数は92名。(2020年3月27日14時現在)

公衆衛生庁では、毎日14時に最新の数字を発表しています。同庁のサイトでは男女別、年齢別、地域別など様々な角度からの数字を見ることができますので、ご興味のある方はご参照ください。

(画面は携帯などではなくPCなど大きな画面で見るほうがみやすくなっています)

スウェーデン首相の演説

スウェーデンのステファン・ロベーン首相は3月22日(日)21時から、国民に向けて演説を行いました。

演説はスウェーデン国営テレビSVTで放送され5分程度の短いものでしたが、終始実直で真剣な面持ちで、事態の深刻さを訴えました。

演説ではスウェーデン語の「medmänniskor」つまり「仲間」とか「同胞」といった意味の単語を何度も用いて、国民全員が一丸となって助け合おうという趣旨が強いものでした。

以下は演説の中のいくつかのメッセージです。

「今は国民が一つとなり、お互いを助け合い支え合うとき」

「リスクがあるなら、今はリスクをとるときではない」

「あなたが大人であるなら、大人らしくふるまい、パニックや根拠のないうわさを流さないこと」

「一人一人が自分の行動に責任を持ち、感染拡大防止に努めること」

「社会が一丸となってこのウィルスに立ち向かおう」

ちなみに3月25日の世論調査では、ロベーン首相率いるスウェーデン与党、スウェーデン社会民主労働党(Socialdemocraterna)の信頼度が2.4%上昇したという結果が出たそうです。

※SVT/NOVUS調べ

イベント

3月27日(金)、政府は3月29日(日)より50人以上の集会を禁止すると発表しました。これはドイツやイギリスなどヨーロッパの他国がすでに二人以上の集会を禁止していることに比べると、いまだに柔らかめな決断です。しかしスウェーデンとしては3月11日に出された500人以上の集会禁止要請以降、新たな要請となります。

海外渡航

ヘルシンキから福岡、名古屋、札幌など日本への直行便を複数都市に飛ばしていたフィンランド航空(フィンエアー)は、これまで次々と直行便の運航キャンセルを発表してきました。

3月20日の時点で残っていた直行便は、大阪と東京でしたが、そちらも3月27日以降全てキャンセルとなり、これで日本への直行便は全てなくなりました。

また、スカンジナビア航空(SAS)や日本航空(JAL)も日本と北欧の間の直行便のキャンセルを発表しました。

今年の6月からは全日空(ANA)がストックホルムー羽田間の直行便を数十年ぶりに飛ばす予定となっていましたが、こちらも運航があやぶまれそうです(現時点では欠航という発表はありません)。

学校、保育園

義務教育は引き続き通常授業を行っています(一部は学校の自主判断で休校措置をとっています)。

ただし政府によるといつなんどき遠隔授業になってもいいようにの準備は着々と進められているそうです。準備の様子については3月20日のブログに詳しく記載しておりますのでご参照ください。

中小企業を対象とした政府支援

第1弾、第2弾に続き、3月25日に第3段の政府経済支援対策が発表されました。

これまでは主に大企業に対しての貸し付けなどの支援策が中心でしたが、第3弾は主に中小企業を対象としたものです。

1.国が新規ローンの70%を保証する。保証により銀行は企業に貸し付けしやすくなる。(1企業当たり最大7,500万スウェーデンクローナ(約8億8千万円)目安)

2.従業員に対する雇用保険の軽減。

3.ホテル、レストラン、店舗などの分野を中心に、家賃を最大50%政府が補助する(4/1-6/30まで)。

これに対し、野党からはこのような一部の家賃負担や雇用保険の一部負担では、目の前で毎月の収入が0に近くなり家賃や給料が支払えない中小企業が倒産から免れるのは難しいとして、より大規模な支援対策を求める声が上がっています。

スウェーデンの生活

医療

3月27日(金)の公衆衛生庁の記者会見では

「スウェーデンはCovid-19の感染者数が徐々に増加しているが、現在はまだ必要な人に医療がいきわたっている」

と発表しました。

ただしニュースなどでは医療現場で対応が進む様子も多く報道されています。同時に、必要な医療器具や防護服などが不足した場合はどのように対応するか、またそれに対してどのような準備が進められているかが、TV、ラジオのニュース番組や新聞で頻繁に議論され、国民の関心の高さがうかがわれます。

スウェーデンで感染の疑いがある場合
まず「スウェーデン医療相談窓口」1177に電話をして指示を仰ぐこと。

医療の優先順位は

新型コロナウィルスCovid-19の感染拡大による医療現場への負担増加を受け、スウェーデンの社会庁(Socialstyrelsen)は「集中治療」に関する新たなガイドラインを発表しました。ずばり、集中医療を受ける患者の優先順位のガイドラインです。

社会庁のコロナウィルス医療優先順位ガイドライン

1.回復の見込みがもっとも高いものが優先的に治療される。

2.回復の見込みが同じくらいな場合、予想される余命の長いものが優先される。

3.回復の見込みや余命が同じくらいな場合、基礎疾患の有無が考慮される。

以上のガイドラインは主に集中治療を行うかどうかの判断基準となるもので、集中治療を行わないと判断された場合でも、緩和ケアなどの医療を受けることはできます。

このようなガイドラインは、パンデミック状況下でなくとも、ふだんから医療現場には常に存在するものだそうです。しかしながら、現在のパンデミックによる医療現場への負担増加を受け、集中治療を行う対象や優先順位をより明確に示したものとなります。

このニュースをラジオで耳にした時、何か命の優先順位をつけられているようで恐ろしい気持ちになりました。そして同時に、医療現場の最前線で戦っている方々の精神的肉体的ストレスをより身近なものとして感じ、感染拡大防止のためにできることをやらなければ、という真剣な気持ちになりました。

ストックホルム市内の様子

政府の推奨する外出自粛や、自宅勤務を実行する人が増えています。特に70歳以上のリスクグループについては、日々のスーパーや薬局への買い物も控えるよう推奨されています。

ストックホルム市内からは人が減り、多くのレストラン、カフェ、店舗などが厳しい状況に追い込まれています。

上の写真はストックホルム中央駅の地下鉄乗り場の近くの広場ですが、普段人であふれるこの場所も、今は閑散としています。

また、スウェーデンを代表する観光名所「スカンセン野外博物館(Skansen)」までも倒産の危機に直面しており、政府支援が急務であるという書簡を政府文化省に送ったことも明らかになっています。

在宅ワーク、どうしてる?

意外と少ない、スウェーデンの在宅ワーカー

自由な働き方やノマドが多いなどのイメージが強いスウェーデンですが、スウェーデンの調査会社Netigateの最新の調べによると、在宅ワークを行っているスウェーデン人は意外と少ないことが明らかになりました。

  • いつも通り仕事に入っている 51%
  • 在宅ワークに切り替えた 14%
  • 職場と在宅両方 23%
  • 病気+その他 12%

こちらはスウェーデン全国の887人を対象に行われた調査で、職種は限定していません。そのため、調査に参加した多くの人はそもそも在宅ワークが可能ではない職種であることも考えられます。

在宅ワークの時に気を付けることは

普段会社のオフィスで仕事をしている人が在宅ワークを行う場合、仕事効率の低下や精神的なストレスが心配されます。以下は、スウェーデンで推奨されている「在宅ワークの時気を付けること」リストです。

●会社に通っているときと同じように規則正しい生活を行う。

決まった時間に出勤しなくていいからといって、昼過ぎまで寝たり夜中まで仕事をするのはよくありません。いつもと同じ時間に目覚ましをかけ、いつもと同じ時間に就寝するよう心がけましょう。

●朝夕昼に散歩をする

通勤はなくなりますが、朝仕事を始める前、また仕事が終わった後に、10-15分などの短時間でも良いので外に出て散歩をするとよいでしょう。そうすることで、仕事時間とプライベート時間の切り替えがしやすくなります。また、昼休憩の時間にも20-30分程度散歩をするとよいでしょう。

●定期的に休憩をとる

こちらも一人で在宅ワークをしているとついつい怠ってしまいがち。それでも、いつもと同じ時間に昼食をとり、また定期的に休憩をとることが仕事効率を上げるうえでも重要です。

●適度な運動を心掛ける

外出自粛やジムやスポーツセンターなどが閉鎖していることから、普段の定期的な運動機会が損なわれがちですが、家でできる簡単なストレッチや筋トレなどの運動を行うことで、健康な体を維持し基礎体力を保つことも推奨されています。

なぜスウェーデンは他国と違うのか

先日から取り上げていますが、スウェーデンの政府の指示は他のヨーロッパ諸国や、フィンランド、ノルウェー、デンマークなど北欧諸国と比べ、比較的「ゆるい」ことが話題になっています。

それについては3月20日のブログでも述べたようにもともと「庁」の権限と信頼が高いことにもよりますが、それ以外にもいくつか理由があるようです。

スウェーデンの対策が他国と違う理由

「庁」の権限と信頼が高く、政府の政治的判断による対策が少ない。

公衆衛生庁では、これまでのデータや研究結果から、コロナウィルス感染は長期化すると予想しています。公衆衛生庁の分析責任者リサ・ブロワ―ス(Lisa Brouwers)氏によると、社会全体や特定地域の閉鎖、国境閉鎖、外出禁止などの激しい対策は長期的に継続することは難しいとの判断です。人々へのストレスはもちろん、社会そのものが機能できなくなることでデメリットが大きい。スウェーデンとしては長期的に必要な人に必要な医療を提供し続け、かつ社会へのダメージを最小限に抑える戦略を組んでいるとの話でした。

国民と「政府」や「公的機関」の間に信頼関係がある

それぞれの国ごとに、国民と政府、公的機関の間の信頼関係レベルが異なります。それにより、政府や省庁が出す要請や推奨に国民がどのくらい従うか、というレベルが異なります。

スウェーデンはもともと国民と政府、公的機関の間の信頼関係が厚い社会のため、国民が政府の「要請」や「推奨」に従うことが前提となっています。

ただし、移民増加によりいわゆる一般的な「スウェーデン人」とは異なる考え方の国民が増えたことが、この前提の根底を揺るがせているという批判もあります。

限られた資本をどう使うか

全ての地下鉄車両、バス、公園ベンチ、券売機など、さらには街全体を消毒する国もあります。専門家によると、このような消毒による効果は、実際にウィルスの感染拡大を防止することよりも、国民の不安を抑えることにある考えられています。

国民の精神的安心の確保やパニック防止は一部の国や文化においては重要であるものの、スウェーデンでは限られた資本は感染者治療のための医療、また経済対策のために使うという戦略をとっています。

共働き社会

核家族で共働き家庭が圧倒的なスウェーデン社会では、例えば保育園、小中学校を全国休校することと、それにより発生する医療現場の人員不足リスクが高いです。そのため、全国休校が及ぼす影響を鑑み、慎重に吟味しています。

参照資料:Svenska Dagsbladet 3月9日

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以上、3月27日時点、新たに加わったスウェーデンのコロナウィルス関連の様子をまとめてみました。

日本もスウェーデンも、外出自粛や自宅勤務が続きストレスのたまりやすい環境になっています。

ぜひ定期的な運動や散歩を心掛けて、基礎体力や免疫力をキープするよう頑張りましょうね。

皆さま、どうか引き続き感染に気をつけつつお過ごしください。

なお、万が一スウェーデン旅行中に何かお困りのこと、心配がある場合は、在スウェーデン日本領事館にご連絡することをお勧めします。

在スウェーデン日本国大使館の連絡先

TEL:+46-(0)8-5793-5300 (閉館時は緊急電話対応業者につながります)

FAX:+46-(0)8-661-8820

H P:http://www.se.emb-japan.go.jp/

スウェーデン在住:ダールマン容子

※記載には公的機関のホームページなどの情報をできるだけ正確に集めましたが、万が一誤った情報などにお気づきの方はどうぞご連絡ください。