不便すぎる生活を喜ぶスウェーデン人のなぞ、その真相は…

こんにちは、スウェーデン在住のソピバ店長ようこです。7月も後半、いよいよ本格的な夏の到来ですね。日本では、地域によっては40℃を超える気温も観測しているとか。どうぞくれぐれも体調には気をつけてお過ごしくださいね。

さて、7月のスウェーデンは夏休みシーズン真っただ中。以前のブログにも書きましたが、

店長
7月のスウェーデンは社会全体がお休みモードです…

会社員など普段バリバリ働いている人たちが4週間以上も夏休みをとってしまうこの国では、7月は街中から働く人が消えるのです…。詳しくは↓こちらのブログで。

かくいう私も実は今、サマーハウスに滞在しながら、このブログを書いています

北欧「サマーハウス」とは何ぞや

皆さんは「サマーハウス」と聞くと、どのようなところを想像しますか?

日本語のイメージでは「別荘」?そして別荘といえば「特権階級だけに許される、優雅ですてきなのんびりした暮らし」とイメージされるかもしれません。

しかし、北欧の「サマーハウス」というのは、

店長
違うんですよ…

北欧のサマーハウスというのは、「別荘」というより「田舎の家」というほうがぴったり。ここには「優雅さ」や「快適さ」はありません。

スウェーデン人にとってサマーハウスで過ごす一番の目的は、優雅さや快適さではなく「自然の中で苦労してすごす」ことだということが、12年暮らしてだんだんわかってきました。いったいどういう事なのか…我が家のサマーハウスの様子と共にお話させてくださいね。

不便すぎてびっくり!な、北欧サマーハウス

先日、ソピバのフィンランドスタッフの葵さんがフィンランドのモッキ(サマーハウス)のことを、詳しく紹介してくれました。そちらに書かれているように、スウェーデンでも多くのサマーハウスは、水洗トイレもない、洗濯機もない、シャワーもない、中には水道や電気すら通っていないところがほとんど。WIFIはおろか携帯の電波すらつながらないところも多いです。

普段の生活とは離れたないないづくしの「原始的生活」、それが北欧のサマーハウスの暮らしなのです。

大人だけならまだしも、赤ちゃんや小さな子供、またティーンエイジャーなど色々な年齢の子供も一緒の生活の場合は特に、トイレ、洗濯機、水道、電気、WIFIのない生活というのは…

店長
くさいし、汚いし、子供の文句は絶えないし… 正直、本当に、、、不便すぎるのよ~~!!

スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国は、世界的にみていわゆる先進国、それもむしろ世界の最先端に近い。スウェーデンのインターネットの普及率は90%以上、また社会や生活のあらゆるシーンでのデジタル化、効率化が進んでいます。また世界に先駆けてキャッシュレス化が進むスウェーデンは、2017年には国内取引の現金の割合はたったの2%になりました。

ごく一般的な家庭でもキッチンにはIHストーブ、オーブン、電子レンジ、食器洗い機、大型冷蔵庫、冷凍庫が揃い、バスルームにはもちろん洗濯機、乾燥機。家の掃除はロボット掃除機、また暖房はセントラルヒーティング、家中に無線WIFIが飛び、TVはネットフリックスやアップルTVなどのストリーミングが一般化。一昔前の漫画の中の世界のように、ある意味近未来的な、効率的かつ快適な生活を送っています。

私はそんなスウェーデン人たちが、サマーハウスの暮らしであえて「自然の中で苦労してすごす生活」を喜ぶ姿が、正直理解できませんでした。

でも12年の時を経た今は、それこそが深いところにあるスウェーデン人の「スウェーデン人らしさ」のもとにあると感じています。

小さな島のサマーハウス

一口にサマーハウスといっても、もちろん様々な場所の様々な家がありますが、我が家の場合をお話してみたいと思います。

わが家のサマーハウスは、スウェーデンの南東の海の上にぽっかり浮かぶ、直径1㎞弱の小さな島にあります。この家は、夫の先祖がかつて水先案内人や漁師として暮らしていた家。わが家のサマーハウスというのは、その先祖代々残された古い家のことなのです。下の写真に写っているポートレート写真の夫婦の男性がこの家を作った人。1870年頃だそうです。

現在はその子孫である私たち家族や親せきが、一緒にこの家をサマーハウスとして使っています。

島への交通手段は船のみ(主にマイ・ボート)。島には車が通れる道路はなく(荷物は手押し車で運ぶ!)、買い物ができるスーパーもなく(買い出しは週に一度、わざわざ船ででかける!)、牛が放牧されているようなのどかさ。まさに大自然の中、近代生活とは隔離されています。

ムーミン好き、ムーミンファンの方の中には、その作家であるトーベ・ヤンソンさんの生き方や、晩年くらした島の家をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。もしご存知でしたら、その暮らしに近いもの…と思っていただくとイメージがわきやすいかもしれません。(島には他に10家族ほど暮らしているので、トーベ・ヤンソンさんのような単独生活ではありませんが)

さて、この場所で数週間くらしていると、普段の生活では気づかないことに突然気がつくという面白い体験をすることができます。

それは何だと思いますか?

サマーハウス暮らしの中で気づくこと

お金の力は無限大か?

田舎の簡易的な生活の中では、お金がたくさんあることのメリットがありません。暮らしの多くは天候や自然に左右される部分が多く、お金があれば希望が叶うというわけではありません。また高価なブランド品などはそれが本当に質の良いものでなければ、意味のないものに感じられます。

物は捨ててもなくならない

普段の生活では、ごみはごみ箱に捨てたり、収集所に出せば終わり。排泄物はトイレで「流す」ボタンを押せば消えてなくなる、そんな風に感じます。でも、実はそのごみや排泄物は、決して消えるわけではなく別の場所に移動しているだけなのです。それはどこ?そのあとどうなるの?自分が出すごみや排泄物について、意識します。

世界を支配しているのは誰か

蚊やハチ、ハエ、アリ、クモなどの虫の数は人間の数より圧倒的に多いと考えたことはありますか(サマーハウスの中はハエやハチの死骸だらけです笑)。水の中には無数の魚や生き物がいることを、意識することはありますか。

普段の生活で、この世は人間が中心で人間が支配しているように思いがちです。でも実は自然界全体を考えると、人間はごくごく少数派の存在だと気づきます。

弱くて無力な人間

例えば目の前にある大きな石を動かしたい。邪魔な木を切り倒したい。でも人間がそれをするには道具や機械がなければできません。自然を前にすれば、生身の人間には太刀打ちできないことばかり。

また晴れや雨、暑さや寒さなどの天候は、与えられるがままに受け入れるのみ。この世界を支配しているのは人間や文明ではなく、自然なのだということを感じます

家族や仲間の大切さ、ありがたみ

困ったとき、迷ったとき、どうしていいかわらかないときに助け合えること。協力し合えること。話し合って知恵を共有できる存在があること。それがどれだけ幸せで重要なことかを感じます。自分一人では何もできないことを知った時、仲間や家族の大切さを深く感じることができます。

まだまだたくさんありますが、これは数週間のサマーハウスでの不便生活から気づくことの一部です。

このように、自分の普段の生活範囲と異なる世界で生きることで、「わたしの常識、あなたの非常識」的な体験ができ、視野を広げることができます。

ソピーさん
自然の中で不便な暮らしをすると、普段の悩みがちっぽけに感じる!新しい感覚を得られる!いろんなことが目からウロコだよ!

実際これはとても楽しい体験です。私は、これがスウェーデン人が「サマーハウス滞在」という形で自然の中で不便で不快で不潔な生活(笑)を喜んでしたがる理由だと思います。

スウェーデンの小さな島で、日本を感じる暮らし

私は普段ストックホルムに暮らしていますので、普段の生活や仕事などをとおして知り合う街のスウェーデン人たちは、携帯やコンピューター、インターネットを使いこなし、最先端のデジタル文明に生きています。

しかし、実はきっと多くのスウェーデン人は、サマーハウスで過ごす数週間を小さいころから体験しており、その中で、私がここに書いたような「価値観の流動性」や「自然への畏敬」を知らず知らずのうちに感じて育ってきているのではないかと思います。

私は、これが北欧が他のヨーロッパ社会とは異なる面白味であり、それが私たち日本人にとって特別で魅力的に感じる部分なのではないか、と思っています。またそれは、デザインやものづくりの中に感じられる「自然」の存在感の理由ではないかとも思います。

日本という国も昔から自然の中に八百万の神の存在を信じ、また妖怪やもののけの存在を恐れてきました。また過酷な自然災害の影響もあり、現在でも多くの人が心のどこかで自然へのあこがれや恐怖を感じながら生きていると思います。

もちろん普段の暮らしの中でそんなことを誰かと話すことはないかもしれません。それはスウェーデンでも同じ。でもその、心の奥底に皆があたりまえに持っている自然への畏敬の感覚が、日本人とスウェーデン人の似ているところだと感じます。

というわけで、こんな風にして、日本から遠く離れたスウェーデンの、小さな小さな島の、古い古いサマーハウスでの暮らしで、私は何となく日本にもっと近づいたような気持ちでいます。

ぜひ皆さんもスウェーデンやフィンランド、北欧に旅行に来られた際には、人々の暮らしの身近にある自然を感じ、日本と北欧の共通点を感じてみてくださいね。

なんだか今回は難しいようなお話になってしまいましたが、また別の機会にもっと具体的なサマーハウスでの暮らしぶりについてお話ししたいと思います。どうぞお楽しみに!

最後に、サマーハウスからおすすめアイテムをご紹介

さて、最後に。このサマーハウスの生活で実際に使って特に重宝しているキッチン雑貨を3つご紹介します。よろしかったらぜひショップで詳細もご覧くださいね。

北欧キッチンタオル

リネンのおかげでさらりと快適、吸水性、乾燥性が高い。大判なのでたくさんの食器の拭き上げに便利!もちろんデザインの魅力はいうまでもなく抜群です。

キッチンワイプ/スポンジワイプ

吸水力、速乾力はもちろん、煮沸消毒もできるので湿気の高いところでも衛生的に使えるのが嬉しい。

ウールのポットスタンド

鉄の鍋やフライパンをドカンとのせても安心感があります。カラーがとにかくかわいくてうれしいのです。