自分の行動が世界を変えると信じる子供たち

こんにちは、スウェーデン在住店長のようこです。

今日は、「モノ」から離れて、少しスウェーデンの教育についてお話ししたいと思います。

我が家のこどもは現在9歳と4歳、スウェーデン生まれスウェーデン育ちです。私も夫もフルタイムで仕事をしているので、こどもたちは二人とも1歳からプレスクール(就学前学校)に通っています。

そんなわけで私も長男が1歳の時、保護者という立場でスウェーデンでの教育システムデビュー(笑)をしました。以来今年で9年目となりますが、日々新鮮な驚きや気づき、戸惑いや感動に直面しています。

子供の学校の様子やお友達とのやり取りを見聞きたり、自分も保護者や教師たちとやりとりをしたりして、

店長

へーー  ほーー  ふーーん

と言いながら、日々過ごしています。

「教育」というテーマについてはたくさん書きたいことはありますが、今日はそのうちの一つを皆さんと共有したいと思います。スウェーデンがイノベーティブな理由、投票率が85%以上な理由がわかるかも?!

何がいいとか、わるいとか、そういう視点ではなく、こんな考え方もあるんだという事を知っていただき、何かを考えたり行動したりするきっかけになることがあればうれしいです!

15歳の環境保護活動家

グレタ・トゥーンベリという15歳のスウェーデンの少女のことを、ご存知でしょうか。

 

HANNA FRANZEN/AFP/Getty Images

彼女は15歳でありながら、「環境保護活動家」と呼ばれ、2018年12月にポーランドで行われた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)の会場で、190か国の各国代表を前に立派な演説を行いました(グレタの演説の全文はブログの最後に引用します)。

その演説の中で彼女が言った次のセリフは、世界中で多くの良識ある大人たちの心に突き刺さりました。

あなた方は、自分の子どもたちを何よりも愛していると言いながら、その目の前で、子どもたちの未来を奪っています

グレタはもともと別に有名人だったわけではありません。彼女がこのような大きな場所で演説を行うことになったそもそもの始まりは、2018年の9月から数か月間にかけて、毎週金曜日学校の授業をストライキしてスウェーデンの国会前に座り込みを行ったこと。

その座り込みの要求は、「大人はもっと真剣に温暖化対策を考えて!」ということ。

環境問題について見聞きし、地球の将来や自分たち子どもの未来を深刻に考えたグレタは、

今の私には、学校の授業に出るより重要なことがある

と考えこのストライキを始めました。

初めはたった一人ひとりで行っていたストライキですが、次第にクラスメートに、他の学校の生徒たちに、他の都市に、スウェーデン全土に、そしてさらには世界中に広まり、数か月後には世界中の子供たちが賛同して行う大きな抗議活動となり、世界中のメディアが注目するところとなったのです。

自分の小さな行動が変化を起こす

グレタの例は少し特別な例かもしれません。でも私はスウェーデンの子供たちは一般的に

スウェーデンの子供たち
自分の行動が学校や社会、そして世界を変えることができる

と、本気で信じていると感じます。

それはとても素敵なこと。でも私にとってはとても驚くべきことで、いったいどうしてそんな風に感じられるのだろうと不思議に思ってしまいます。

正直なところ、私は自分の小さな行動が世界を変えられると信じることはできないし、子供の頃もそんな風に感じていなかったように思うからです。もちろん現在はインターネットやソーシャルメディアの発達により、個人の発信力が強まっているという時代の背景はあるかもしれません。

でもそれ以上に、私はスウェーデンの子供たちを見ていて、幼いころからの「成功体験」により「世界を変えることができる」と信じられるようになるのではないかと考えるようになりました。

修学旅行費を修学旅行に使わない、という決定

つい先日スウェーデン国営テレビの子供向けのニュース番組「Lilla Aktuellt(リッラ・アクチュエルト)」で、ある小学3年生クラスのこんなエピソードを見ました。

スウェーデンの学校では、Skolkassan(スコールカッサン)という修学旅行費の積立金システムがあります。小学1年生から貯めはじめ、3年生で修学旅行に行くというのが一般的です。

このニュースに取り上げられた小学3年生のクラスではその「積立金を使って修学旅行に行くのをやめる」という決定をしました。修学旅行はもちろん学校の慣例ですが、クラスメートの一人の親が重い病気になったことから、その病気の大変さを知り、クラスの積立金は同じ病気に苦しむ人のために全額寄付するほうがいいと考えたのです。

その提案は子供たちから出され、まずは子供たちが話し合いを行い意見をまとめ、担任を説得し、親を説得し、学校を説得し、その結果「修学旅行にはいかないで、修学旅行費は病院に寄付する」という決定に至りました。

このように、子供たちが何かの意見か考えを提案した際に、教師や学校組織、また親たちは「子供は大人が決めたルールに従いなさい」「ルールや慣例に反するからできません」と言うのではなく、それを真摯に受け止め対等な立場で民主的な対応をするやり方は、スウェーデンらしいものです。

「あなたは影響を与えられる」

スウェーデンの教育の基本には「あなたは影響を与えることができる」という考えがあります。

集団生活においてルールや秩序は大切。でも学校が教えなければいけないことは、

ルールは「元からあるもの」ではなく、自分たちでつくりだしていくものなのだ

ということ。それを子供に認識させるために学校の活動には様々な工夫がされています。

例えばテストの点数に対してそれが不服であれば教師に説明を求めることができるし(教師には説明義務がある)、給食の内容に不満があればそれについて議論をし、その結果給食内容を変えることもできます。

小学校、いえ実は生まれた瞬間からスウェーデンの子供たちは「自分の行動が周りに影響を与えることができる」という体験を積み重ねて育ちます。

それが大人になった時の政治や社会への関心、そして行動力につながっていることは、間違いありません。

参考までに、スウェーデンの議会選挙の投票率は85%を下回ることはほとんどありません。それに対し、日本では50%前後が常のようです。しかも、例えば2018年10月の衆議院議員総選挙を例にとると、10歳代が40.49%、20歳代が33.85%、30歳代が44.75%、全年代を通じた投票率は53.68%ということで、若い世代はより低い投票率となっています。

子供は未来の大人たち

当たり前のことですが、子供はいずれ大人になります。

そして大人になった私たちの中には、子供の時からの経験や体験がたくさん詰まっています。

だから、子供の時にどのような体験をするのか、経験をするのかはとても大切なこと。

なかでも、「自分の行動が影響を与えることができる」という感覚は、私も小さいころ身につけたかった感覚の一つです。もちろん挫折を経験することもあると思いますが、それでもそんな基本感覚で人生を過ごすことができたら、自分の人生がもっと楽しく、幸せに感じられるのではないでしょうか。

純粋で無垢な子供の時間こそ、すてきな大人になるための人間の基本づくり。

大人としては、全力で応援していきたいことだと思います。

 

今日はデザインや雑貨とは関係のないお話でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

最後に、前記のグレタ・トゥーンベリさんのCOP24での演説全文を記載します。お時間ありましたら、読んでみてくださいね。

私はグレタ・トゥーンベリといいます。15歳です。スウェーデンから来ました。「クライメート・ジャスティス・ナウ」の代表として演説しています。

スウェーデンは小国なので、私たちが何をしようと問題ではないと言う人がたくさんいます。

でも私は、どんなに小さくても変化をもたらすことができると学びました。

もし、たった数人の子どもが学校へ行かなかっただけで世界中の注目を集めることができるのなら、私たちが真に望めば力を合わせて何ができるかを想像してみてください。しかしそのためには、それがどんなに不快なことであっても、はっきりと発言しなければなりません。

あなた方は人気低落を恐れるあまり、環境に優しい恒久的な経済成長のことしか語りません。非常ブレーキをかけることだけが唯一の理にかなった対策なのに、あなた方は私たちをこの混乱に陥れた、あの悪いアイデアを推進することしか口にしません。

それは大人気のない発言です。その重荷をも、あなた方は私たち子どもに負わせているのです。でも私は人気取りのことは考えません。私は気候の正義と生きている惑星のことを考えます。

私たちの文明は犠牲にされています。ごく少数の人たちが莫大なお金を稼ぎ続ける機会のために。

私たちの生物圏は犠牲にされています。私の国のようにお金持ちの国の人たちがぜいたくな生活をするために。その苦しみは、少数の人のぜいたくのために、多くの人たちが払う代償なのです。

2078年に、私は78歳の誕生日を迎えます。もし私に子どもがいたら、一緒に過ごしているでしょう。子どもたちは私にあなた方のことを尋ねるかもしれません。まだ行動できる時間があるうちに、なぜあなた方は何もしなかったのかと。

あなた方は、自分の子どもたちを何よりも愛していると言いながら、その目の前で、子どもたちの未来を奪っています。

政治的に何が可能かではなく、何をする必要があるのかに目を向けようとしない限り、希望はありません。危機を危機として扱わなければ、解決することはできません。

化石燃料は地中にとどめ、公正さに目を向けなければなりません。この制度の中で解決することがそれほど難しいのであれば、制度そのものを変えるべきなのかもしれません。

私たちは、世界の指導者たちに相手にしてほしいと懇願するためここへ来たのではありません。あなた方はこれまでも私たちを無視してきました。そしてこれからも無視するでしょう。

私たちは言い訳を使い果たし、時間も使い果たそうとしています。

私たちは、あなた方が望もうと望むまいと、変化は訪れると告げるためにやって来ました。真の力は人々のものなのです。

ありがとうございました。

CNN.co.jpより引用